小学校5年生は、小学校に入り順調だった勉強に陰りが見える学年です。
特につまずきが如実に表れる科目が、算数です。
今回は小学5年生の算数で、つまずきやすい単元をピックアップ、その理由を解説していきます。
5年生より前でつまずいているかも・・・という場合は4年生バージョンをご覧ください。
小学5年生が学習する算数の単元一覧
まずは小学5年生で習う単元を見ていきましょう。
多いですよね。
それぞれの単元の難易度も、小4に比べて難しくなっています。
考え方を理解するのに時間がかかったり、練習量が必要な単元が増えているのが、難しくなった理由です。
塾講師時代の経験をもとに、生徒たちが苦しめらていた単元をランキング形式(個人的見解です)で見ていきましょう。
5年生がつまずく単元ランキング
【第5位】単位量あたりの大きさ
単元名だけではどんな問題を解くかわかりにくいので、例題を紹介します。
キーワード「人口密度」を見て何となくわかりますでしょうか。
パッと見なんとなくBの方が混んでそう・・・?って感じですね。
この単元では、根拠となる人口密度を計算します。
✔解き方
人口密度は「人数÷面積」で求めます。
A市 ⇒ 100万÷50平方キロ=2万
A市は1平方キロメートルあたり2万人いることになります。
B市 ⇒ 50万÷10平方キロ=5万
そしてB市は1平方キロメートルあたり5万人います。
ということで同じ面積にいる人数が多い「B市の方が混んでいる」ということになります。
というような問題です。
この単元の難しいところは、質問が2種類あることです。
- 1平方キロあたりの人数を出して、混んでいる方を答えなさい。
- 1人あたりの面積を出して、混んでいる方を答えなさい。
上の例題は①の方法で解きました。
問題によっては②の方法(面積÷人数で1人分の面積を出して)、狭いほうが混んでいるという答え方をしなければなりません。
学校の授業で「割り算を使いましょう」と言われ、なんとなく「大きい数字÷小さい数字」で問題は解けてしまいます。
しかし、いざテストで聞かれると、「割り算を使う」のはわかっていても、「どっち÷どっち?」と迷ってしまい手が止まってしまいます。
そして難しい!算数嫌い!となってしまうわけです。

この単元は「何を聞かれているか」を読み解く練習が重要です。
何となく「大きい数÷小さい数」で覚えてしまうと、次に紹介する問題で不正解になり、混乱してしまいます。
- A市は100万人が50平方キロ
- B市は50万人が10万平方キロ
ここですぐ「100÷50と50÷10!」ではダメなんです。
もちろん「混んでいるのはB市である」という答え自体は正解です。
しかしこの単元ではもう1つ、「なぜ」を答えないと正解にはなりません。
「なぜ」まで正しく答えて初めて正解です。
この違いを問題文を読んだ時に判断できないと正解なのに不正解現象がおこり、間違っている理由がわからず、苦手意識を植え付けてしまうことになるのです。
☑解決ポイント
この単元を解くキーワードは「○○あたり」という言葉です。
○○に来るものが、割り算の後ろ!と覚えれば、ほぼ間違いありません。
「面積あたり」だったら人口÷面積、「1人あたり」だったら面積÷人口
これさえ覚えていれば、解き方も答えも正解となります。
問題を解く練習するときは、「○○あたりを聞かれている」ということを意識してみましょう。
練習すると聞かれ方や答え方にも慣れて、パズルのように解ける様になります。
【第4位】分数の足し算・引き算
小学3年生で分数と出会い、小学4年生で分母が同じ分数の足し算を習います。
そして小学5年生で、分母の違う分数の足し算引き算を習います。
分母を同じ数にし、分子を足し、約分して、仮分数は帯分数に直して・・・と1つの問題で注意するルールが沢山あります。
練習を繰り返して、気を付けるポイントに慣れていかないと、すぐに「分数苦手・・・」と苦手意識がついてしまいます。
☑分母の違う分数の足し算・引き算のポイント
5年生で学習する「分数の足し算・引き算」は分母が違う(異分母といいます)ので、通分をしなければなりません。
通分は5年生で学習しますが、分数のルールが曖昧だと通分でつまずきます。
「分母を倍にしたら分子も倍にする」というような基本ルールから始まり、「分母が同じになったら分子だけ足し引きする」という最終段階まで、様々な要素が盛り込まれます。
公倍数・公約数も、久々に出てくるのでおさらいしておいた方がいいですね。
解き方はわかっているけど、約分忘れ、分子を足すときにウッカリミスといった間違えを繰り返してしまうと「自分は分数はダメだ」と決めつけてしまいます。
分数の問題をたくさん解く練習を積むことで、自分はどういう間違え方が多いのか、特にここを気を付ければ正解率が上がる!ということに気づくことができます。
「理解ができていなくて間違える」ではなく、「ミスに気づけなかったから間違えた」と思えれば「やればできる」単元にすることができます。
解き方が理解できているのであれば、ひたすら練習をする!
これが分数に苦手を意識を持たない方法です。
【第3位】合同な図形
「同じ形の図形を見つけましょう!」という単元です。
多くの人が図形・合同と聞くと、苦い思い出がよみがえる単元だと思います。
「合同」は5年生から始まり、高校受験や大学受験まで非常に長い付き合いをする単元だからです。
5年生ではその準備として、定規や分度器を使って正確に図形を書く練習をします。
また、三角形、四角形などの特徴を学びます。
「三角形の内角の和は180度」といった基本的な内容から、多角形の内角の和を求める方法などのテクニック的なところまで、その内容は多彩で地味~に量も多いです。
この時期に図形に対して苦手意識を持ってしまうと、今後かなり厳しい戦いを強いられることになります。
中学生でやる「証明問題」のような難しい内容ではないので、5年生のうちにたくさん図形に触れておくことが大切です。
【第2位】整数と小数
分数とならんで算数・数字のルールでつまずく単元が小数です。
5年生でやる小数の勉強はこんな感じ。
10が1個
1が2個
0.1が3個・・・
といった特徴を抑える単元です。
もう1パターン
0.01を10倍すると小数点が移動して0.1になる
4年生では足し算、引き算までだったので、小数点の存在をあまり深く考える必要はありませんでした。
しかし5年生では掛け算、割り算まで学習します。
0.1+0.1=0.2
をすんなり受け入れていたのに
0.1×0.1=0.01
0.1÷0.1=1
の仕組みに拒否反応を起こす子供は珍しくありません。
しかもこの単元は5年生のスタートで学習する教科書が多く、5年生になり突然算数がわからなくなったと感じてしまう子供が多い原因の一つでもあります。
☑小数の苦手を引きずらないために
小数、分数に共通して言えるのは、
計算のルールが多いこと(分数でも書きましたね)
そのせいで、1つ気を付けたらもう1つのルールの部分で間違えてしまう・・・
ミスを繰り返してしまうせいで「自分には解けない」と思ってしまうという悪循環です。
分数のとき同様、何度も解いてルールに慣れることが克服の近道です。
5年生でできなくても、大人になったら小数や分数って解けますよね。
長い年月で何度も触れてきて、場数を踏んだおかげで当たり前のように解けます。
慣れるのに必要な練習量が10問で済む子もいれば、100問解いてようやく慣れる子、1000回解いてもミスを繰り返してしまう子、いろいろいます。
必要な練習量はそれぞれです。
しかし、練習すれば克服できる単元なのは間違いありません。
何か月かかっても構わないと思います。
さきほどの「合同」は大人になったら使わないかもしれません。
しかし分数・小数は大人になったら当たり前のように使いますよね。
百歩譲って図形は捨てたとしても、この単元は必ず克服しましょう。
【第1位】割合
堂々の第1位は「割合」!!
元にする量、比べる量、割合 の3兄弟が子供たちを苦しめる単元です。
「割合」の単元でやる問題は3パターンです。
3兄弟いるからですね。
- 元にする量を求める問題
- 比べる量を求める問題
- 割合を求める問題
その前に具体例を上げて3兄弟それぞれを確認しておきましょう。今回は「タケノコの里(30粒入)」を使います。
例題の中で元にする量、比べる量、割合はどれかな?
元にする量 → 30粒
比べる量 → 15粒
割合 → 半分
このように当てはまります。
実際の算数の問題では、比べる量が空白だったり、元のする量が空白だったりします。
他の2つの数値から空白の値を求める、というのがこの単元の趣旨です。
「割合」は読解力と計算力と練習量が物をいう単元
「2つの値を使って残り1つを求める」とサラっと書きました。
これは、問題を解くために必要なスキルが詰まっていることを示しています。
- 何を使って何を求めるかを読み解く読解力
- 小数や分数を使う計算を正確にとく計算力
- 多くの出題パターンをこなす練習量
計算に自信があっても、式が作れなければ解けません。
読み解く力があっても、計算ミスが多いと得点になりません。
数問解いただけではすぐに忘れてしまい、次の学年で勉強し直さなければなりません。
僕が受け持っていた生徒で、こんな解き方をしている生徒がいました。
「とりあえず掛け算して、割り算もして、それっぽい数字が出たからこれが答えだな。」
1つの問題に対して、いろんな計算パターンを試してそれっぽい答えから選ぶという作戦。
実はこれ、ある市販の教材で「困ったらこう解く!」と紹介されている方法です。
間違いなくやめたほうがいいです。
割合をマスターするのに必要な3つのスキルのうち、計算力しか使わずに解くことになります。
問題文で「何を聞かれているか」を読み解く力は、割合に限らず多くの単元で必要なスキルです。
「下手な鉄砲、数打ちゃ当たる」で算数・数学を解こうとしてはいけません。
☑割合を苦手にしないコツ
「割合」でつまずく大きな問題は、目に見えない数値が出てくることですね。
たけのこの里の例でいくと
箱の中の30粒→見える
食べる15粒→見える
半分→見えない
50%とか1/2とか、割合を表す数値は目に見える物ではありません。
「ほら、これが50%だよ」と手に乗せて見せてくれるオジサンはインチキおじさんです。
そこで最初にやっておくといいのが、日常生活の中で割合を見つけることです。
例えば。
1時間は1日に対してどれくらいの割合か。
1日は24時間だから、そのうちの1時間なので1/24
と、スラスラっと出てくれば考え方は大丈夫です。
ここが出てこない場合は「たけのこの里の半分(50%、1/2)」とか「4袋入りのうちの1つ(25%、1/4)」というような、目に見える物を使って割合の表現に慣れるといいです。
円グラフを使った解説書をよく見ますが、「グラフ」に対する拒否反応を持つ子もいるので注意が必要です。
割合は5年生の単元の総合問題でもあります。
分数や小数の計算はこのためにやってきたようなものです。
ここでつまずくと、6年生以降でも似た単元が何度も出てくるので、かなりの苦労が予想されることになります。
最後に
5年生が勉強でつまずく理由は、僕としてはこのように考えています。
- 文章題が増えてくる
- 計算のルールが難しくなってくる
- 概念系が増えてくるしスピードが上がる
- 行事が増えて時間数が足りないことがある
5年生になると授業の難易度が上がり、つまずく生徒とそうでない生徒の差が大きく広がりだします。
また過去の勉強内容を使って解く問題が増えるため、ごまかしてきた部分が一気にさらけ出されることになります。
ただ小学校の学習内容は、取り戻すのに時間はあまりかかりません。
つまずいてしまう生徒のほとんどが、練習量不足によるものです。
勉強は予習よりも復習の方が身につくと言われています。
昔やったことを思い出しながら練習すれば、苦手意識も徐々に薄れるでしょうし、そこで解決しておくとまた忘れた時に思い出すのが非常に楽です。
見て見ぬふりをして将来壮絶な苦労をするか、今のうちに少しずつでも手を加えておくか
どっちにするかは、あなた次第です!!
子供は自分ではやりませんからね。
親がやらせられるかどうか、それが
あなた次第です!!
ってことです。